遂に渡った!最後の辺境〜北大東島

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    JUGEMテーマ:旅行記

    ここ二十年来、辺境の島巡りを続ける中で、最後まで残った島の一つ・北大東島。

    コンビの相棒である南大東島には15年ほど前に渡島済みだが、その際には北の島影を肉眼におさめながらも渡ることは叶わなかった。

     

    あの時もう2日余計に日程が取れれば…と後悔すること15年。折に触れて彼の島の情報に接するたびに、行かなくては! と想い続けた。そしてついにその日がやってきたというわけで、出発一週間前に差し掛かったあたりでは早くも武者震いのゾクゾク感が。旅支度をしながらも思わずニヤケてしまう有様だ。

     

     

    2018年7月11日。梅雨明けの真夏シーズン到来となった那覇空港は多くのバカンス客で大混雑だが、大東行きのRAC(琉球エアコミューター)便が発着する「離れのような」1階ターミナル(搭乗口28・38番)は、バカンスとは無縁の空気感。

    このターミナルは大東諸島をはじめ、石垣、宮古、久米、そして奄美、与論など沖縄・鹿児島県内離島便専門となっており、ロビーにひしめく搭乗客の多くがその島民、もしくは仕事で島へ赴く人々だ。2階のメインターミナルに比べると俄然、ネイティヴさ匂う空間であり、ここに身を置いた瞬間からがすでに離島。

     

    搭乗までしばし。島の概要をおさらいしよう。

     

    大東諸島は北大東島・南大東島・沖大東島(無人島)の3島からなり、行政的には北大東村(そん)・南大東村の2村に分かれる。総人口は2019年現在でおよそ1900人(北大東村約600、南大東村約1300)で、位置的には那覇(沖縄本島)から真東に約400キロ。地図で見れば九州・宮崎県のちょうど真南といった位置で、周囲に島はなく、まさに絶海の列島だ。

     

    地勢的には両島ともにいわゆる「隆起環礁」(サンゴ礁が隆起して発生)であり、島のぐるりは断崖絶壁。ビーチといえる砂浜は一切ない。おおむね島の真ん中が凹んだ地形で、その周りを「幕」と呼ばれる小高い丘が囲むような形になっている。

     

    そして旅客にとって最も重要な交通手段であるが、東京・大阪・福岡などからの直行航空便はもちろん無く、前述・RACの50人乗りプロペラ機が一日一往復。運賃は往復割引で片道16600円(2019年12月現在)であり、JALで言うところの「先得」のような早買い割引の類は年間を通して一切適用がない。羽田=那覇が先得割引なら往復2万円前後で買えるというのに、同じ沖縄県内の往復で更に3万円以上かかってしまう。これが大東に観光客の足が向きづらい最大の要因だろう。

     

    その航空路は、曜日により那覇ー北大東ー南大東ー那覇と回る便と、逆経路で回る日とに分かれる。これを利用して北島と南島の間のみを移動することも可能で、ちなみにこの北=南の路線は、日本最短の航空路線(13辧θ行時間3分)であり、交通マニアの熱い注目を浴びている…らしい。しかし一方で「距離あたりの運賃が最も高い」路線でもあり、3分で8500円(片道。往復割引では5600円)とは、単純に目の飛び出る価格ではある。

     

    そしてもちろん船便も存在する。那覇と南北大東島を結ぶ定期貨客船「だいとう」は、おおむね週に1・2便(年間66航海)。運賃は往復で約1万1千円と、飛行機に比べ破格といえる安価ではあるが、690トン・定員55名の中型船で片道15時間。台風接近時などはもちろんのこと、少しの時化でもすぐ欠航になるとの話で、もし乗れたとしても外海での揺れは推して知るべしで、船酔いしやすい御仁はまず避けた方が無難のようだ。

     

    かく言う私(船には比較的強い)は迷いに迷った挙句、まずは一ヶ月前に「だいとう」を予約。同時にエアチケも購入し、当日船が出なければ飛行機に切り替え、無事出港ならエアチケはキャンセル(普通運賃なので手数料440円でキャンセル可)という策に出た。

    そして今、那覇空港のターミナルにいるということは…そう、今朝の時点で本日の「だいとう」欠航が発表されていたのである。ああ、やっぱり駄目だったかというぐらいで、自分でも不思議なほどさしたる感慨もなく、空路で向かうことにする。

     

     

    那覇空港を離陸したプロペラ機はすぐに洋上を東へ。この先400劼砲藁γ呂呂ろか岩礁の類も一切なく、やや低空をひたすらに駆ける。40分ほどすると左前方に見えてくる円い平らな島影。これが南大東島だ。

     

     

    更に接近して上空から見る島の美しさは絵画のごとし。

    沖縄の離島路線に乗っているとしばしばこうした眼福に恵まれるが、中でも私のお気に入りは那覇ー石垣便の機上から見下ろす多良間島あたりか。

     

    中南部の集落以外は畑もしくは山林、中央部には多くの池があるのがわかる。こうして島の地勢が一瞬にしてわかるのも空路アクセスの特権で、船ではこうはいかない。

     

     

     

    南大東空港に着陸。一旦機を降り、北大東行きを待つ…とはいっても同じ機体。運用上は別便となるための乗り換えであり、南島から北島、那覇へと向かう新規の乗客もある。

     

    ほどなくして再搭乗。いよいよ国内最短航空路線のフライトだ。着席と同時にカメラを動画モードで回す。飛行時間3分を余すところなく撮っておこう。

     

    プロペラが回り、離陸。すぐ前方に北大東島の姿が見えるや、そのまま着陸態勢に。前輪を出す音が響く。わかっていたとはいえ、思わず笑ってしまうほどあっという間だ。

     

     

     

    北大東空港到着。周囲は何もなく、視野には今乗ってきた機体と白いアスファルト、青い空が広がるのみ。照り返しが強烈に肌に刺さる。

     

    ターミナルには予約した宿の若いスタッフが送迎に来てくれていた。島内にバス・タクシーはなく、空港との往復は宿の送迎が頼り。滞在中はレンタカー、バイク、自転車等々で動き回ることになる。

     

     

    今回の宿「二六荘」は、離島の民家そのものといったアパートメントスタイル。廊下を挟んで両側に部屋が並ぶ。造りは古いが掃除が行き届いており、もちろんエアコンも完備。居心地は良さそうだ。古いといえば隣接するもう一棟の青い宿泊棟は更に鄙びた風情であり、後から聞いたところによれば国の登録有形文化財に指定されているとか。できるものならこちらに泊まりたかったか。

     

     

    庭の奥には山羊が。食用? 

    …などと呟いていると、胡散臭そうな目でこちらを見る。

     

     

     

    宿近くの西港周辺を散策。道端にはハイビスカスが咲き、空の青さとの対比がやはり沖縄を感じさせる。そして「大東ブルー」と称される海はどこまでも深く碧い。向こうにハッキリと見せる陸地はもちろん南大東だ。

     

     

     

    以前の主産業であったリン鉱石の貯蔵庫跡。

     

     

     

    港上の小高い場所に立つ魚市場。

    時間を決めその日揚がった魚の刺身など買えるという話も聞いたが、島滞在中最後まで一度も開いてなかった。私のタイミングが悪かっただけだろうか。

     

    明後日の南大東行きの乗船券を予約購入するのは港裏・水産組合の事務所。

     

     

    今日乗れなかった「だいとう」、果たして明後日の便は来るのだろうか?

     

    7月の沖縄の夕暮れは遅い。19時近くなってようやく薄暗くなってきたところを、今夜の目当てとしていた酒場へと向かう。

    集落を外れ、畑に囲まれた起伏ある舗装路を歩いて約20分ほど。居酒屋「村おこし」は、店名も可笑しいが、建物はそれ以上のインパクト。工事現場の事務所の如きプレハブ作りだ。

     

     

     

    それでも品書きは想像以上の豊富さ。この島でこれだけの食材を揃えているだけでも驚嘆に値する。

     

     

     

     

    オリオン生、久米仙と続き、泡盛には多良間産の黒糖を溶かす。これはその多良間島で教わった飲み方で、キンキンに冷えすぎて刺激の強い泡盛がマイルドに、かつ悪酔いしない…ような気がする。

     

     

     

    つまみは豆腐チャンプルーにゲソ天。

    このゲソ天の逞しいこと!さぞや大きな烏賊なのだろう。泡盛との相性も良い。

     

     

    締めは島寿司だ。ここ大東諸島は明治時代、伊豆諸島・八丈島からの移民団により開拓されたため、食文化的にも沖縄より八丈寄りが色濃い。この後再訪する南大東でも島寿司はメジャーな品書きだ。

    おそらく近海で獲れるトンボ(キハダ)マグロであろうか、脂少なめの刺身をヅケにして握った鮨。酢飯はやや甘めながら、これが島の味!と噛み締め、濃い目の泡盛で流し込む。

     

     

    後から思い出してみれば、ここから宿への帰り路が、今回島で最も印象に残った時間だったかもしれない。

     

    漆黒の闇、とはこれだ。

    酒場を離れると街灯一つなく、本当の本当に真っ暗。足元の道すら判然としない。この日は新月か、月明かりもなく、上空には降ってきそうなほどの無数の星、そして蛙と虫の声だけが響き渡る。

    五代目志ん生師の小噺で、夢に出てきた巨大な茄子を言い表すのに「暗闇にヘタを付けたような」というのがあったが、そんな面白おかしいようなものではなく、恐怖を覚えるレベルのものだ。酔いも一気に醒め、手持ちのスマホの光を頼りに往きの倍近い時間をかけて戻る。

     

     

    翌2日目は自転車を借り島内散策。昼前には西港で釣り糸を垂れるも釣果わずか。

     

     

    海面から高すぎる岸壁に、高所恐怖症の私はやや腰が引けてしまった感じもあったか。濃紺の海と空に心癒されはしたが。

     

    昼食を求めに島中央部の集落にあるJAスーパーへ。600人の島としては充実した商店だ。

     

     

     

    入店時刻は正午少し前。昼食を求める島民や旅客がみなここを目指してくるのか、弁当売り場にはわずかなパンとジューシー(炊き込みご飯)が残るのみ。やや出遅れたようだ。

     

    午後は海水浴。島最東端の空港脇にある「沖縄海(おきなわうみ)」へ。

     

     

    ビーチのない大東諸島ゆえ、岩場をくり抜いて大きな水溜まりを拵えた海水プールである。ちなみに南大東にも「海軍棒」「塩屋」の2つのプールがある。もちろん外海の水が直接入り込んでくるわけであるから真夏でも結構冷たい。

     

     

    近寄ってみると、沢山の小魚が悠々としており、かき乱すのが申し訳ないような…

     

    夕食は島の中心的公共施設「はまゆう荘」のレストランにて。自転車もここで借りたものだ。

    海遊び後の生ビールは格別にして絶佳!

     

     

     

     

    流石は島唯一のレストランだけあって、刺身の出し方も美しく整っている。

    店の雰囲気としては昨夜の「村おこし」の方が好みではあるが、こうして南国リゾート風情を楽しむのも悪くない。

     

     

    翌3日目。早くも南大東への移動の時を迎えた。船は出るらしい。

     

    西港へと向かうと、そこには既に「だいとう」が碇泊中。

     

     

    片道15時間以上を航海する貨客線としては想像した以上に小さな船で、早くも前後上下にぐわんぐわんと揺れている。これを見た瞬間「那覇から乗って来なくて良かった…」と心底思う。北島から南島へはわずか1時間。それでも目の前で大きくスウィングする船体には一抹の不安を覚える。

     

     

    そしてこの船、乗客・荷物ともにクレーンで吊り上げられての乗船下船となる。絶壁の港湾、そして常時荒れがちの海面ゆえ、接岸させタラップを渡すことは不可能。これこそが大東島で全国的にも最も名の通った「クレーン乗船」である。

     

     

    まだ大量のコンテナの積み下ろしが盛んに行われている出港30分前。クレーンに繋がれたゴンドラに荷物を乗せ撮影などしていると、近くにいた作業員から「早く乗って!」と促される。貨物の後が旅客かと思っていたが、乗り次第いつでも、という流れのようだ。

     

    ゴンドラに乗り、入口をガチャンと閉められる。遊園地のジェットコースターで扉を閉められた時の感覚だ。ほどなくして上昇。ぐいーーん!…と音はしないが、漫画なら効果音が入っているであろう。地上が一気に離れていく。が、次の瞬間にはあっけなく船上に。正直期待していたほどのスリルはなかったが、乗ってスリルを感じるようではそれこそ危険と背中合わせになってしまう。

    人生初のゴンドラ乗船体験を終え、あとはこの船が極力揺れずに南島に向かってくれることを願うばかりだ。

     

    (南大東島編へ続く)

     

    《北大東島・まとめ》

    ○那覇より片道1時間前後。航空運賃に割引制度はなし

    ○食文化は基本沖縄も、島寿司をはじめ八丈島仕様少々

    ○夜の漆黒の闇と満天の星空、そしてクレーン乗船を一度は体験すべし

     

    ★北大東村観光ナビ

    https://www.kitadaito.jp


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